2017年4月5日水曜日

「戦闘」をめぐって(2)


<ところで鳩山首相がやめた原因が、北朝鮮の核だったのではないかとPART1で書きましたが、これはあてずっぽうで言ったわけではありません。実は細川護熙首相が辞任した理由が「北朝鮮の核」だったことが、非常に有名な関係者の証言によってあきらかになっているのです。その証言者とは、小池百合子・元防衛大臣です。…(略)…
 文字通りの盟友だった武村長官を切ることに悩みぬいた細川首相は、ついに内閣改造を決意したものの、社会党の連立離脱をちらつかせた反対にあって断念。4月8日、辞任することになります。最初に小池議員に電話をしたときから、わずか2か月後のことでした。マスコミは突然の辞任の理由として、国民福祉税の導入失敗や、佐川急便に関するスキャンダルをあげていましたが、側近として苦楽を共にしてきた小池議員は「私の見方はまったく違う。ずばり、北朝鮮問題だ」と断言しています。それは辞任前に本人の口から、こう聞いたからだというのです。
「北朝鮮が暴発すれば、今の体制では何もできない。ここは私が身を捨てる〔辞任する〕ことで、社会党を斬らなければダメなんです。それで地殻変動を起こすしかないんです」

細川内閣で官房副長官をつとめた石原信雄氏は、この1994年2月の日米首脳会談の「相当な部分が北朝鮮問題だった」とのべています。(『内訟録――細川護熙総理大臣日記』)そして北朝鮮に対して海上封鎖を行うつもりだったアメリカから、その場合、北朝鮮は機雷を流してくるだろうから、それを日本が除去してほしいと頼まれたが、内閣法制局の判断でダメだったということも証言しています。「北朝鮮が暴発すれば、今の体制では何もできない」とは、おそらくそういうことを言っているのでしょう。

社会党に反対されて武村官房長官を更迭できず、機雷の除去にも応じられない。核を持つ北朝鮮が、いつ「暴発」するかわからないのに、アメリカからの要望にこたえられず、うまく協力関係が築けなくなって辞任に追い込まれてしまった。これは鳩山首相が辺野古案に回帰することになったときと、ほとんど同じ状況です。
 このときアメリカ側のだれか、または日本側のだれかが、意図的に細川首相を辞任へ追い込んでいったかどうかはわかりません。細川首相の独自の安全保障構想が警戒されたという話が本当かどうかもわかりません。
 ただ言えるのは、安全保障面でアメリカと距離をおこうとする日本の首相があらわれたとき、いつでもその動きを封じこむことのできる究極の脅し文句を、このとき「彼ら」が発見したのはたしかだということです。それは「言い方や表現」は別にして、「北朝鮮が暴発して核攻撃の可能性が生じたとき、両政府間の信頼関係が損なわれていれば、アメリカは「核の傘」を提供できなくなります。それでもいいのですか(=北朝鮮の核をぶちこまれたいのか)」という内容だと断言して、まずまちがいないでしょう。>(矢部宏冶著『本土の人間は知らないが沖縄の人はみんな知っていること』 書籍情報社 2011年発行)

日本がアメリカから独自的な判断で動こうとすると、テポドンが飛ぶ、とか言われていたことがあった。北のナンバー2は、アメリカのスパイだとか。上の話をきくと、言うこと聞かないと北の核をぶち込ませるぞ、という脅迫現実が本当にある、ということなのだろう。それを身近に見知ってきた小池都知事は、ではそれをどう教訓とするのだろう? 相手の手の内はわかってきたからもっと逆をついて独立スタンスを作っていこう、とするのか、自分の地位を維持するためにも以前の首相たちよりもっとうまくやらないと、と思うのか……。もしかして、すでにこうした件で、安倍と話しがついて共闘体制に入っているか、あるいはさらに、現総理を飛び越して、アメリカ側からのコンタクト(要望)に応えようとしているのかもしれない。週刊誌の見出しによると、佐藤優氏は、アメリカの金正恩暗殺計画に協力するしかない、ような立場らしいが、庶民はいったい、そんな政治のリアルを、どう受け止めればいいのか? 協力しないと、逆に、北の核をぶち込ませるぞ、となるのだろうか? それはあくまで脅迫だが(アメリカ軍隊を撤退させたフィリピンでは持ち得ない被爆経験者の恐怖だろう…)、それを本当にそうなるかもなこととして腹をくくって、それが陰謀であるとすることに依拠しない(証明など不可能なのだから)、誰とも共有しうるより誠実な論理を紡いでいくことは、あんまり難しくないのではないだろうか? みな戦争はきらいだし、仲良くしようよ、という話が前提なのだから。そこに、個々の具体的な文脈を流し込んでいけばいいだけの話だ。そのバカみたいな話を、大胆に言える勇気があるかないか、の話だろう。脅迫に負けてずるずると悲惨さを味わう生き地獄のほうが、大変なのではないだろうか?

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