2022年9月9日金曜日

釜底現状を見る引用三つ

 


「私たちは自分より強い人間たちに囲まれている。彼らは一〇〇〇の方法で私たちに害をなすことができ、そうやって害をなしても、四回のうち三回は罰されない。このような人間たちの心の中にも、私たちのために戦い、私たちをその攻撃から守ってくれる精神的な原理があることを知るのは、どんなに心がほっとすることだろう。

 さもなければ、私たちは絶えざる恐怖の中で生きなければならないだろう。ライオンの前を通るように人間の前を通るようになり、自分の財産、名誉、生命について一瞬も安心できなくなるだろう。」(『ペルシア人の手紙』モンテスキュー著・田口卓臣訳 講談社学術文庫)

 

 「ウクライナから安価で良質な労働力を吸い寄せてきた西欧諸国にも重い責任があります。ウクライナは独立以来、人口の一五%を失いました。まさに「破綻国家」と呼べる状態です。しかも高等教育を受けた労働人口が流出しました。本来は国家建設を担うべき優秀な若者が、よりよい人生を求めて国外に出ることを選んだのです。現在、大量の難民が発生していますが、ウクライナからの人口流出は、実は以前から起きていたのです。」(『エマニュエル・トッド「日本核武装のすすめ」『文藝春秋』2022年五月特別号』

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 「いまの時点では、現地の状況はあまりかんばしくありません。ウクライナでは二〇一九年に新大統領のウォロディミル・ゼレンスキーが選出されました。新議会の議員は七〇%がそれまで政界で働いたことのない人で、その多くが若者です。旧い政治エリートを一掃したかのように思われました。けれども二〇二〇年に明らかになったのですが、ウクライナの新興財閥は権力をほとんど保ったままで、引きつづき舞台裏で政策を形成しています。

 指導者養成プログラムを後援し、民主的な政府がいかに働くのか、彼らがいかに政策改革を実現する手助けができるのかを多くのウクライナの若い人たちに教えることで、変化をもたらすことができるというのがわたしの考えです。より大きな政治情勢がどうあれ、ウクライナを訪れると楽観的になって帰ってきます。そうした指導者養成プログラムで教えているのですが、そこには多くの若いウクライナ人が参加します。三〇代や四〇代の比較的若い人がたくさんいるのです。ソ連のもとでは育っていない人たちで、ウクライナがヨーロッパの一国であってほしいと強く望む人たちです。」(『「歴史の終わり」の後で』フランシス・フクヤマ/マチルデ・ファスティング編・山田文訳 中央公論社)

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