2021年3月10日水曜日

コロナ・ワクチン禍の映画


 ワクチン接種がはじまって、なおさら、ある日本映画が気になっていた。


が、タイトルが思いだせなかった。4、5年前なような気もするが、それもはっきりしない。低予算B級映画、みたいな。


だけどそこに出ていた若い俳優たちのなかには、その後売れ筋になった者もいる。が、その名前もわからないので、検索もできなかった。


が、昨日、女房の手術入院まえにデートでもしなくてはいかん、と、吉祥寺のアップリンクに、映画をみにいった。中国の「春江水暖」。で、待ち合いのスペースに飾ってあった現在上映中のポスターに、あの探していた映画の主演女優をみつけたのだ。ので、やっと検索でき、たどりつけた。


太陽』、とあった。

2016年公開だ。劇団でやってたものを、映画化したとある。コメント欄でも、コロナ状況との類似を指摘していたものがあった。


主人公の若い女性は、ワクチン接種を拒否して、〈原始人〉社会のように取り残されたムラを捨て、門番が取り締まる境界を越え、文明化したトシへと移るべく、決意する。


ワクチンを打つと、人格もなんだか変わってしまって、そして、太陽のでている日中には活動のできない闇の人となる。


たしか、日が沈むとき、いや登るときだったか、世界にサイレンが響きわたるのだった。


2019年のカンヌに出品された『春江水暖』は、中上健次の「地の果て 至上の時」の、現代中国地方都市版、を穏やかに描いたものだ。第一巻、としてエンドしたから、おそらく次あるとしたら、4人兄弟の、ビル解体現場で働いていた独身の末っ子が、博打で捕まった次男の後釜として、共同体崩壊あとの世界の闇を、ヤクザ者として、縦横無尽に躍動する予定なのだろう。


が、コロナである。

路地消滅後の、中上の作品のようにはいかない。陽を浴びたチンピラの世界は無理である。闇は深くなる。不可視になる。しかしそこに巣食うのは、映画『太陽』のごとく、エリート階級なのだ。

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