2022年3月6日日曜日

映画『ドライブ・マイ・カー』を観る

 


当初、新聞の記事などでは、妻を失った男の人生の話、みたいな枠での紹介ばかりだったので、それを映画として上手に撮った作品なのかな、そこに東洋のエクゾチズムみたいのが加味されてカンヌでも評価されることになったのかな、と思っていた。『万引き家族』や『スパイの妻』とかも、そういう印象だったから、その延長なのかな、と。韓国の『パラサイト 半地下の家族』もそうだし、村上春樹の短編小説「納屋を焼く」を映画化した韓国の『バーニング』も、そういう枠にはいるだろう。が、韓国映画は、予定調和的な落ちではなく、自らの思想が世間とずれていても最後まで貫いて終わる、という残酷さみたいなのが徹底しているところが違うから、今回の村上作品を原作とした『ドライブ・マイ・カー』も、その文化的な差異を露呈させて終わるのかな、とその確認でもしようかと、映画館に向かったのだ。

 

が、見事に、裏切られた。上にあげた作品らと比べても、私は、ダントツに推す。それは、映画として職人芸的によりうまく作られているから、ということではない。現実を切りとる見方の思想性において、現実に対応できている、追いついている、と共感できるのだ。

 

映画は最初、演劇演出家の男と、脚本家の妻とのセックスシーンが反復される。妻は、精神的な病を抱えているのか、残酷にも幻想的な物語を、性交中に言い始める。いかにも村上作品的な雰囲気なので、このまま大人のメルヘンみたいなものを三時間近く見せられることになるのかな、とうんざりしそうになる。セリフも長い朗読ふうで、映画をみにきたものとしては、居心地が悪くなる。

 

が、そこに、意味があったのだ。伏線というより、脚本による、カットのつなぎによって、意図がホラー映画か、ミステリー―のように浮き彫り迫ってくるようになっている。

 

若い俳優との浮気を繰り返す妻の、今夜話がしたい、というその話を聞くこともないまま、男は妻にくも膜下出血で突然死された。そこで初めてオープニングの曲と俳優や監督の字幕がでて、映画がはじまったのだった。

 

舞台は東京から、広島に移った。

 

もう、ストーリは、語るまい。決定的なところで、夕やみに浮かぶ原爆ドームがうつる。四歳の娘を失っていた男も、劇場側から用意されたお抱え運転手の23歳の女も、みな傷を負っている。その妻も、運転手のキャバレー勤めの母親も、多重人格的な病を内に秘めて仕事をして、亡くなった。男の演出は多言語で、観客のために、背景に字幕が映写される方策をとっている。口がきけず、手話で演技する女性が、チェーホフの『ワーニャ叔父さん』のソーニャ役をしていて、「苦しくても、生きていきましょう」と、無言で伝えて、映画は最後、運転手の女が、韓国ナンバーにかわっていた男の赤い外車を、手話で演技した女性の飼い犬とおぼしき犬と、一緒に乗って走ってゆく姿で終わる。

 

私は、いまウクライナで起きていることを思った。重なってきた。世界の人々の苦しみは、どこにあるのであろうか?

 

池袋での映画をみるまえ、なお時間が少しあったので、岡崎乾二郎さんの壁画をみにいった。以前、女房と二人でみているが、今回、ひとりで黙ってみていると、みえてきた。エスカレーターをおりて、階段下からみあげて確認した。

 

冒頭の写真がそれだ。

 

反復ずらされてゆく十字架、そこから流されてゆく大量の血の川……

 

フェイスブックに投稿した文章を添付する。

 

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A ghost called a man is wandering around the world

We should look at ourselves before blaming others. I'm Japanese, but I remember the words of Jesus Christ. "Let him who is without sin cast the first stone."

 It's more against humans than against war. Both Biden and Zelensky knew Putin's seriousness. Nevertheless, They  accepted the quarrel. Mankind is involved in the logic of these Yakuza. The logic of crappy men. Putin will use nuclear weapons. And instead of shooting his head with a pistol like Hitler, he would also shoot a nuclear warhead into the Kremlin and self-destruct.

For most of post-historical Europe, the World Cup has replaced military competition as the chief outlet for nationalist strivings to be number one. As Kojève once said, his goal was to reestablish the Roman Empire, but this time as a multinational soccer team. It is perhaps no accident that in the most post historical part of the United States, California, one finds the most obsessive pursuit of high-risk leisure activities that have no purpose but to shake the participant out of the comfort of a bourgeois existence: rock climbing, hang gliding, skydiving, marathon running, ironman and ironwoman races, and so forth. For where traditional forms of struggle like war are not possible, and where widespread material prosperity makes economic struggle unnecessary, thymotic individuals begin to search for other kinds of contentless activities that can win them recognition.〉(Francis Fukuyama,  ”The End of History and the Last Man”

他人を責める前に、自分を見つめたらどうなのか? 私は日本人だが、イエスの言葉を思い出す。「罪なきものがまずこの女に石を投げよ」戦争反対よりも、人間反対だ。バイデンもゼレンスキーも、プーチンの本気をわかっていた。にもかかわらず、その喧嘩を、受けてたったわけだ。このヤクザものたちの論理に、人類が巻き込まれている。くだらない男たちの論理。プーチンは、核を使うだろう。そして、ヒトラーのように、頭を拳銃で撃ち抜くのではなく、クレムリンにも核弾頭をぶち込んで、自爆するだろう。

https://danpance.blogspot.com/2022/03/blog-post.html?m=1

 



I want to appeal to the Ukrainian people. Everyone knows that the Russian Putin has begun to invade this time. So you can surrender with confidence. In the past, the Japanese also fought a thorough fight to prolong the war, and as a result, indiscriminate carpet bombing and two atomic bombs were dropped. I don't want to see other people like that again. On TV, a Ukrainian grandmother sadly says "Surrender to Russia will kill all lives, not just our territory. It was once thought that if the Japanese surrendered to the United States, the men would be killed and all the women would be raped. But that didn't happen. If we had surrendered earlier, many people's lives would have been saved. But Ukraine is still in time. Please survive. Surrender to war is neither the end of life nor the loss. The fight continues. Endure the intolerable, and survive. Please.

私は、ウクライナの人々に、訴えたい。今回、プーチンロシア側か、いっぽう的に侵略をはじめたのは、みなが知っている。だから、自信をもって、降伏してください。かつて日本人も、徹底抗戦して戦争をながびかせ、その結果、無差別絨毯爆撃と、原子爆弾を二つ、落とされた。もう二度と、他の人々に、そんな目にあわせたくありません。テレビでは、ウクライナのおばあさんが、ロシアに降伏したら、領土を失うだけでなく、みな殺されてしまう、と嘆いていました。日本人もかつて、アメリカに降伏したら、男は殺され、女はみなレイプされるのだとおもわされた。が、そんなことにはならなかった。もっと早く降参していたら、たくさんの人の命が助かった。しかしウクライナは、まだ間に合う。どうか、しぶとく生き抜いてください。戦争への降伏は、人生の終わりでも、負けでもない。闘いは、つづくのです。耐え難きを耐え、どうか生き延びてください。

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